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若くして亡くなった建築家 山田幸司くん。彼は私の1年後輩だった。
ディテール侍として皆からかわいがられ、著名な建築家らと広い交友関係を結んだ。
この家は彼が生前、自宅の設計として残した図面や、それまでの作品を参照して、残された家族のために作られた住宅である。当初計画されていた自宅は大家族のための家であったため、用意された敷地には当てはまらず、再度新しく計画することになった。コストとの長い戦いがあり、一時は木造で作ることも検討されたが、やはり鉄骨で作らなければ山田くんの家にならないと、関係者が皆で協力してこの課題に取り組んだ。結果としては外観は極めてシンプルな箱型とし、インテリアの間仕切りやドアは全く無くしオープンなワンルームとした。工種を削減するため、内装工事や木工事をなくすことにした。外壁はそのまま内壁となるよう断熱材をサンドイッチした金属パネルとし、屋根は金属の折版(ダブル)とした。階段や手すり、梁とスラブの納まりに山田くんのディテールを用い、全体の色調も彼の作品に沿ったものとした。ガラスのテーブルと同じディテールとしてサイズを少し小さくしたものを作り、彼の祭壇とした。

そういった経緯で出来上がったオマージュ的な作品であるから、AUAUの住宅作品としては掲載しないこととした。ご家族がこの家を通じて山田くんを身近に感じ、明るく幸せに暮らしてくれることを心から祈る。

2017年12月

施工:吉良建設

構造設計:中野稔久

撮影:谷川寛

設計担当:内田幹

アドバイザー:村上心 五十嵐太郎 南泰裕